視えるだけじゃイヤなんです!
倉橋家を出ると、もう太陽が真上に昇りきっていた。学校、さぼっちゃったな、とぼんやり思う。
「お前にやってもらいたいことは、霊の正体を見極めることだ」
さかさかと歩きながら、昭くんはあたしに声をかけた。あたしはしかたなく彼の後ろをついて歩く。
昭くんは、背中にギターのケースを背負っていた。中にはあの刀が入っている。そのまま持ち歩けないからなんだそうな。確かに、腰に刀をぶら下げてぶらぶらしてたら、危険人物まっしぐらだもんね。
結局、押し切られる形でその仕事とやらにかり出されることになったんだけど、どうにもあたしは納得できない。断ろうって思ってたのに、なんだかいつの間にかこの人たちのペースに巻き込まれている。
そんなわけで、あたしはけっこうふてくされてた。
「……不満あり、って顔だな」
昭くんはくるっと後ろをふりかえると、あたしの顔を見てにやりと笑った。
「お前も、透のワザにやられたクチか」
「ワザ?」
歩幅をせばめて、ゆっくりと歩く昭くんに追いつくと、あたしは問いかける。
「ああ。あいつは、天然のタラシだから」
「タラシって……」
なんだか言葉悪い。
「あいつの言葉には不思議な響きがある。魅了する力があるんだ。だから、人にも好かれるし、人じゃない者にも好かれやすい」
不思議な話だったけど、あたしはなんとなく納得できた。確かに、透くんの声を聞いていると、なんでもしてあげたくなっちゃう、というか。うん。人から好かれやすい人なんだろうな、っていうのは身をもって体験してるもんね。実際、仕事も引き受けちゃったし……。
あたしは改めて、二人のことに興味を持った。
「あのさ、倉は……あ、昭くんって、あたしと同じ中学なんだよね。何年生?」
「三年。まあ、あんまり学校行ってないけどな」
「透くんは?」
「あいつも三年だ。とはいえ、あいつは小学校の頃から、ほとんど家から出てないけど」
あたしは透くんの真っ白な髪の毛を思い出した。お化けを退治する仕事っていう話だし、訳ありなんだろう。人のご家庭の事情はあまり深く突っ込んじゃいけない。
ん?
同じ三年生ってことは、つまり。
「二人は、双子なの!?」
「そう。似てないだろ」
明るいところで見ると、昭くんはけっこう整った顔をしていた。短い黒髪に、真っ黒な瞳。肌は健康的に焼けてて、ちょっとがっしりした体つきだ。
確かに、透くんの透き通るようなやわらかなイメージとは正反対で、似てるかって言われると、うん、とは言いづらい。
「お前は、二年だろ?」