視えるだけじゃイヤなんです!
 明らかにサボってるもんね。さすがにちょっとだけ、罪悪感。
 昭くんは裏門に背を向けて、そのまままっすぐ歩きだす。あの神社に向かっているようだった。あたしはちょっと怖気づいてしまう。

 昭くんは、俺が何とかする、って言ってたけど。昨日あんなことがあった場所にもう一回行くのは、正直怖い。
 その気持ちをまぎらわすために、あたしは昭くんに声をかけた。

「ねえ、あたしの力、霊を視る力って言ってたけど。昭くんも視えるんだよね? ……じゃあ、なんでその力をそんなにほしがったの?」
「お前、それ聞くか……?」
 じろり、と昭くんはあたしをにらむ。

 ヤバっ、地雷二回目!

 あせったあたしに昭くんはため息を吐いて、唇のはしをひょいと持ち上げた。
「まあ、知っといた方がいいか。お前はなにかかんちがいしているみたいだけど。俺は、霊が視えない」
「ウソ!?」
「俺だって、ウソじゃないかって思ってるよ」
 はあ、と特大のため息をついて、昭くんは神社の階段を上り始める。
「倉橋家の者は、代々不思議な力を持っている。その力を使って、ずっと昔から霊関係の仕事をうけおっているんだ」

 すごい、なんだかアニメやマンガの世界みたいだ。

「一族の能力にはそれぞれに得意不得意がある。だから同じ一族同士、協力しあいながら仕事をする」
 一段、また一段と神社の階段をのぼりながら、昭くんは淡々と話した。

「霊を視る力と祓う力。これは同じように見えて全然別モノだ。俺は祓える。でも、視えない。透は視える、でも祓えない。こんなにはっきりと得意不得意が別れることはめずらしいんだそうだ。だから、二人でようやく一人分の仕事しかできない」

 あたしは首をかしげた。

「でも、昨日……昭くん、あたしがお化けにおそわれてたとき、助けてくれたよね? 視えないならなんでそれがわかったの?」
「視るのと感じるのはまた別な話だからだ。あの時、お前は明らかに何かにおそわれていた。その何かはよくない感じがした。だから視えなくても祓える。でも霊視は別。霊の姿をしっかり見たり、千里眼を使ったり、透のように人の心に干渉することは、俺にはできない」
「へえ……フクザツなんだ」
「しかし、透は体が弱い。昔からそうだった。力を使うとしばらく調子を崩す。場合によっては命に関わることもある。だから……」

 そこまで言うと、昭くんは口を閉ざした。
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