視えるだけじゃイヤなんです!
頭の中を、赤い光がかけめぐる。くらくらして、立っていられなくて、あたしはふっと力が抜けた。
やば、倒れる――!
「……っ危ない!」
がしっと腕をつかまれて、あたしはその場でたたらを踏んだ。
「大丈夫か」
耳もとで声がする。昭くんだ。
あたしは、ほっとしたのと、力が入らないのとで、その場にへなへなとくずれ落ちてしまった……。
さっき視えたものを昭くんに伝えると、昭くんは何やら考えこんでしまった。
「子どもの霊か。それと、その女の人影……ちょっと気になるな」
あたしはチビチビとジュースを飲みながら、昭くんの話を聞いている。
立っていられなくなったあたしに肩を貸してくれて、神社の横のベンチまで運んでくれたのは昭くんだ。近くの自販機からジュースを買ってくれたのもそう。
ベンチもさりげなく木の影になっているところを選んでくれてるし……、この人、実はけっこう優しいのかもしれない。
「その女の人は、怖くなかったんだな?」
昭くんは境内をぐるりと見渡した。
「うん。……でも、怒っているみたいな感じだった」
「怒ってる……か」
あごに手を添えて、昭くんは考えこんでいた。真剣な顔。日に焼けた肌に木漏れ日がさらさらと影を作っていた。
「お前、ちょっとここで待っていられるか?」
「え?」
「境内を調べてみる」
「えっ、あたしも行く!」
置いていかれたくない!
あたしはとっさに声をあげた。
「いや、お前はそこにいろ。邪魔になる」
きっぱりと昭くんは言い放つ。え……この人、邪魔って言った?
そのまま何のフォローもなく、昭くんはすたすたと境内の奥へと歩いて行ってしまった。
あたしは一人取り残される。