視えるだけじゃイヤなんです!
 昭くんはだまっていた。だまってあたしを見つめている。
 わかってるよ、話すよ。視えたことを話せばいいんでしょ。でもさ、待って。あたし、今ちょっと無理。

 こんなのってないよ。
 昭くんは、霊から線を引け、って言ってた。でも無理。あんなの視たら、引けるわけない。
 だって、あの女の子……。きっと、あの場所で、殺されちゃったんだ……。

「……落ち着け」
 黙ってた昭くんが、ぽつりとつぶやいた。
「ゆっくり息を吸うんだ。そのまま同じくゆっくり吐く。自分の中のものを全部はき出して、空気の入れかえをするイメージで」

 昭くんに言われるまま、あたしは息を吸って、吐いて、を繰り返す。
 うん……ちょっと落ち着いてきたかも。

「ありがと……」
「本当は、もう少し時間を開けた方がお前にはいいのかもしれないけど、正直あまり余裕がない。辛いかもしれないが……話せるか?」

 もしあの女の子が、視たとおりに殺されてしまっているのだとしたら。それで、まだ見つからないままなのだとしたら。

 あたしはうなずいた。
 助けてあげたい。それであの子が救われるなら……!




 あたしの話を聞いて、昭くんは黙ってしまった。
 そのまま、森の奥へとサクサクと歩いていく。あたしもその後をついていく。
 昭くんがどこに向かっているかなんて、そんなの決まってる。
 昨日ぶりに見た小さなお稲荷さん。ぼろぼろの鳥居も、コケの生えたキツネも、昨日のままだ。
 昭くんが、社の後ろに回り込んだ。

「ここか」
「……うん」
「じゃ、やるか」

 昭くんが刀をすらっと抜き、そのまま空気をなでるように切った。
 まただ。昭くんが刀を動かすたびに、空気がすこしずつキレイになっていく。
 昭くんが口の中で何かをつぶやき始めた。透くんが使っていたのと同じ言葉だ。不思議な響きのその言葉は、透くんとはちがってどっしりとした重さがある。

「はっ……!」

 刀を、土に突き立てた。そして昭くんがパンっと手を叩くと。
 社のちょうど真後ろ。刀の前の土がボコッと割れる。

「……昭くん……こ……これって……」
「ああ。見つけた」


 土の中には、小さな人間の骨が埋まっていた。


   ◆◆◆


「お疲れさま、大変だったでしょう」
 倉橋家に戻ってきたときには、もう夕方に近い時間になっていた。

 土の中の骨を見つけた昭くんは、スマートフォンでどこかに連絡を取っていた。あたしたちが見つけたことにすると、警察に説明がつかない。だから、倉橋家のその手の人たちに連絡をとって、後のことを任せているんだということだった。

 玄関のたたきに腰かけていたあたしは、まだぼんやりとしていた。
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