視えるだけじゃイヤなんです!
死を司るモノ



「ちょっとここみ!? いつの間に倉橋センパイと知り合いになったのよ!」
 次の日。
 案の定、あたしは通学路で咲綾にとっつかまった。

「倉橋センパイ?」
 ああ、昭くんのことか。
「咲綾、昭くんのこと知ってるの?」
「昭くん!? 昭くんって言ったの!? きゃー!」

 きゃーって。咲綾、今日はいつにもましてハイテンションだ。

「まさか彼氏!?」
「ちがうよ!」

 あたしは全力で否定する。
 確かにあたし、昨日は死ぬほどドキドキしたけどさ、レンアイのドキドキじゃないもんね、残念ながら!

「ちがうの!? じゃあなんで昨日……」
「あー、ええと」
 どうしよう、なんて言ってごまかそう。
「じ、実はあたしのお兄ちゃんと昭くんのお兄ちゃんが友だちでさ! それでほら……家族ぐるみのおつきあいをしてたの! 昨日は家まで送り届けてもらっただけで、咲綾が思ってるみたいなことは何にもないよ!」

 われながら苦しい言い訳だけど、案外あっさり咲綾は納得してくれたみたい。
 なあんだ、と言ってヘラっと笑う。

「それならもっと早く言ってよ! 倉橋センパイって、すっごく人気あるんだよ~」
「……そうなんだ」

 確かに、そう言われると……顔はかっこいいし、口悪いけど、優しいところもあるし。きっとモテるんだろうな。

「うん! あんまり学校に来てないから、実はウラで悪いことやってるとかいろいろウワサはあるけど。そういうとこも含めて人気なんだよ」
「くわしいね、咲綾」

 そう言うと、咲綾は顔をぱっと赤くした。
 あれ? この反応、もしかして。

「じゃ、行こっか!」

 慌てたように、咲綾がかけ出す。あたしはちょっとニヤニヤしてしまう。
 そっか、咲綾って、もしかして昭くんのこと……。

 そう思ったときだった。

 頭の中に、チリッと赤い光が走る。

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