視えるだけじゃイヤなんです!
 透くんは本当にここでお昼を食べるみたいで、注文を済ませてしまう。あたしもあわててサンドイッチを頼んだ。そうだよね、食べて、力をつけないと。かんじんなところで役に立たないなんてことにはなりたくない。

 料理をあらかた片付けても、まだ学校が終わるまで少し余裕があった。
透くんは食後の紅茶をすすりながら、窓の外をぼんやりと眺めている。

「外に出るのも久しぶりだな……」
「家からあんまり出ないって言ってたもんね」
「昭が過保護すぎるんだよ」

 ちょっとだけふてくされたように、透くんはつぶやいた。

「前にね、一度だけ無理しちゃったことがあって。それから昭はずっと僕のことを半病人みたいにあつかうんだ。ずっとダメだ、の一点張りで」

 そのシーン、確かに昨日もあったかも。

「僕、もう大丈夫なのにな……」
 透くんは、くやしそうにくちびるをかんだ。
「役に立ちたいのに、立たせてくれないのはつらいよ」

 あたしは、胸がズキッと痛んだ。にこにこしている透くんの、本当の気持ちが見えたような気がして、言葉に詰まってしまう。

「そろそろかな?」
 透くんが店の時計をちらっと見る。下校時刻を十分ちょっと回ったくらい。うん、ちょうどいいかも。

「じゃ、行こうか」
 あたしたちが席を立ったときだった。
 耳をつんざくようなすごい音がして、あたしは思わず悲鳴を挙げる。

「事故だ!」
「トラックがつっこんだぞ!」

 え!? トラック!?
 あたしは窓の外を見る。そこにはとんでもない光景が広がっていた。
 学校の校門にトラックが頭からぶつかっていた。そのひしゃげた車の横に、生徒が数人倒れている。

 そこに見覚えのある姿を見つけて、あたしは叫んだ。

「――咲綾!?」

 ウソでしょ、ウソだよね!?
 あたしは店を飛び出すと、校門に一気にかけよった。
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