視えるだけじゃイヤなんです!
たくさんの人が周りを取り囲んでる。車のクラクションの音や、人の悲鳴。いろんな音に囲まれながら、あたしは咲綾に近づこうともがいた。
「危ない! 行くな!!」
「救急車を呼んであるから! ここで待ちなさい!」
大人たちが、あたしをはがいじめにする。
「離して!」
あたしは手足をふりまわしてあばれた。
だって、咲綾が!
咲綾が倒れてる……血がいっぱい出てて、咲綾が死んじゃう……!
「ここみちゃん!」
透くんもあたしの腕をぐっとつかんだ。
「落ち着いて! 大丈夫、咲綾ちゃんは生きてるよ!」
あたしはハッと目を見開いた。血まみれになりながらも起き上がろうとしている咲綾を、まわりの大人たちが止めているのが見える。
咲綾……よかった……。
サイレンの音が、どんどん近くなってくる。救急車だ。
落ち着いたあたしに安心したんだろう、大人たちは手を放し、「ショックだったね」「きっと大丈夫だからね」と優しい言葉をかけてくれた。
あたしは手の甲で涙をぬぐった。
救急車が到着して、咲綾やほかの生徒たちが担架で運ばれていく。
またチリッと頭の中で赤い光がはじけた。なんだろう、まだ消えない。イヤな予感がうずまいている。
あたしはチラッと透くんを見た。透くんはやや青ざめた顔であたしを見ていた。血の気の引いた顔で、こくりと、小さくうなずく。このイヤな感じ、透くんも感じているんだろうか。
救急車が発車する。赤いサイレンがくるくると回っているのをあたしは呆然と眺めていた。その背後から。
「――おい」
と知っている声が聞こえる。
ふり返ると、そこには渋い顔の昭くんが立っていた。
◆◆◆
「そうか、お前の友だちが……」
昭くんはそう言ったっきり、むっつりと黙ってしまった。
「危ない! 行くな!!」
「救急車を呼んであるから! ここで待ちなさい!」
大人たちが、あたしをはがいじめにする。
「離して!」
あたしは手足をふりまわしてあばれた。
だって、咲綾が!
咲綾が倒れてる……血がいっぱい出てて、咲綾が死んじゃう……!
「ここみちゃん!」
透くんもあたしの腕をぐっとつかんだ。
「落ち着いて! 大丈夫、咲綾ちゃんは生きてるよ!」
あたしはハッと目を見開いた。血まみれになりながらも起き上がろうとしている咲綾を、まわりの大人たちが止めているのが見える。
咲綾……よかった……。
サイレンの音が、どんどん近くなってくる。救急車だ。
落ち着いたあたしに安心したんだろう、大人たちは手を放し、「ショックだったね」「きっと大丈夫だからね」と優しい言葉をかけてくれた。
あたしは手の甲で涙をぬぐった。
救急車が到着して、咲綾やほかの生徒たちが担架で運ばれていく。
またチリッと頭の中で赤い光がはじけた。なんだろう、まだ消えない。イヤな予感がうずまいている。
あたしはチラッと透くんを見た。透くんはやや青ざめた顔であたしを見ていた。血の気の引いた顔で、こくりと、小さくうなずく。このイヤな感じ、透くんも感じているんだろうか。
救急車が発車する。赤いサイレンがくるくると回っているのをあたしは呆然と眺めていた。その背後から。
「――おい」
と知っている声が聞こえる。
ふり返ると、そこには渋い顔の昭くんが立っていた。
◆◆◆
「そうか、お前の友だちが……」
昭くんはそう言ったっきり、むっつりと黙ってしまった。