視えるだけじゃイヤなんです!
倉橋家、客間。初めて来たのは昨日だっていうのに、あたしはすっかりこの部屋になれてしまった。
あたしと透くんは、昭くんに事情を説明した。
「昭は、どう思う?」
透くんの問いかけに、昭くんはあごに手をそえて考える。
「お前が視たのが本当に未来視なら変えられない」
あたしは目の前が真っ暗になる。
「……でも、予知なら変えられる」
「予知?」
「そうだ。未来視は、未来の出来事を視る力だ。だから変えられない。視たことは確実に起こってしまう。しかし、予知は、これから起こるであろうことを察することだ。これはまだ変えられる可能性がある」
ちょっと待って、頭が混乱してきた。
「もうちょっとかみ砕くとね」
透くんがすかさずフォローしてくれる。
「ここみちゃんが視た風景が、どこが起点になっているかって話なんだ」
「起点」
「そう。未来視は、未来に起点がある。だから、未来ですでに起こってしまったことを視ているにすぎない。でも、予知は感じたその時点が起点になる。これからこうなるということに『気づく』こと。それが予知なんだ」
なんとなく、納得できたけど……。
「あたしが視たのは、どっちなの?」
昭くんが呆れたように肩をすくめた。
「それは本来、お前に聞きたいことなんだがな」
「無茶言わない。ここみちゃんが力を使ったのは昨日が初めてなんだから」
えっとね、と透くんがにこりと笑う。
「ここみちゃんの石はおキツネさまだからね。未来視も、予知も、どっちも可能性がある。だから、正直まだわからない、って言った方がいいのかな」
そう言えば覚さんも、自分の石のことを『ここみちゃんのと種類はちがうから』って言ってたっけ。石の力ごとに得意不得意があるってことなんだろうな。
「じゃあ、まだ咲綾の未来は変えられる可能性があるってこと?」
「ああ。もしかしたら、さっきのトラックの事故――もしかしたら、本来それで亡くなるはずだった『予知』が、お前たちがあの場にいたために変わったのかもしれない」
あたしはちょっとだけ胸をなでおろす。
もしそうだったら、咲綾はもう無事だ。あのトラックで死ぬ予定だった未来は回避されたってことだもんね。
でも……。
「昭、たぶんね、まだ終わりじゃない」
透くんが真面目な顔でそう言った。
「あの咲綾ちゃんって子、多分……やっかいなものに憑かれていると思う」
「憑かれてる!?」
「透!?」
あたしの声をかき消すように、昭くんが血相を変えて怒鳴った。
「お前……力を使ったのか」
「そうだよ。そのために僕はあの場に行ったんだもの」
「バカなことをするな! まだ体が治ってないのに無茶して、取り返しのつかないことになったらどうするんだ!」
「でも、無事だったよ。倒れてもいないし、顔色だって悪くなってない」
目の前で始まった兄弟げんかに、あたしはおろおろしてしまう。
透くんの言ってた、『過保護』ってこういうことか。
「咲綾ちゃんは、ここみちゃんの大切な人なんだよ。恩人の大切な人を守るために力を使うことの何が悪いの」
「……ったく……」
透くんの勝ち。
あたしと透くんは、昭くんに事情を説明した。
「昭は、どう思う?」
透くんの問いかけに、昭くんはあごに手をそえて考える。
「お前が視たのが本当に未来視なら変えられない」
あたしは目の前が真っ暗になる。
「……でも、予知なら変えられる」
「予知?」
「そうだ。未来視は、未来の出来事を視る力だ。だから変えられない。視たことは確実に起こってしまう。しかし、予知は、これから起こるであろうことを察することだ。これはまだ変えられる可能性がある」
ちょっと待って、頭が混乱してきた。
「もうちょっとかみ砕くとね」
透くんがすかさずフォローしてくれる。
「ここみちゃんが視た風景が、どこが起点になっているかって話なんだ」
「起点」
「そう。未来視は、未来に起点がある。だから、未来ですでに起こってしまったことを視ているにすぎない。でも、予知は感じたその時点が起点になる。これからこうなるということに『気づく』こと。それが予知なんだ」
なんとなく、納得できたけど……。
「あたしが視たのは、どっちなの?」
昭くんが呆れたように肩をすくめた。
「それは本来、お前に聞きたいことなんだがな」
「無茶言わない。ここみちゃんが力を使ったのは昨日が初めてなんだから」
えっとね、と透くんがにこりと笑う。
「ここみちゃんの石はおキツネさまだからね。未来視も、予知も、どっちも可能性がある。だから、正直まだわからない、って言った方がいいのかな」
そう言えば覚さんも、自分の石のことを『ここみちゃんのと種類はちがうから』って言ってたっけ。石の力ごとに得意不得意があるってことなんだろうな。
「じゃあ、まだ咲綾の未来は変えられる可能性があるってこと?」
「ああ。もしかしたら、さっきのトラックの事故――もしかしたら、本来それで亡くなるはずだった『予知』が、お前たちがあの場にいたために変わったのかもしれない」
あたしはちょっとだけ胸をなでおろす。
もしそうだったら、咲綾はもう無事だ。あのトラックで死ぬ予定だった未来は回避されたってことだもんね。
でも……。
「昭、たぶんね、まだ終わりじゃない」
透くんが真面目な顔でそう言った。
「あの咲綾ちゃんって子、多分……やっかいなものに憑かれていると思う」
「憑かれてる!?」
「透!?」
あたしの声をかき消すように、昭くんが血相を変えて怒鳴った。
「お前……力を使ったのか」
「そうだよ。そのために僕はあの場に行ったんだもの」
「バカなことをするな! まだ体が治ってないのに無茶して、取り返しのつかないことになったらどうするんだ!」
「でも、無事だったよ。倒れてもいないし、顔色だって悪くなってない」
目の前で始まった兄弟げんかに、あたしはおろおろしてしまう。
透くんの言ってた、『過保護』ってこういうことか。
「咲綾ちゃんは、ここみちゃんの大切な人なんだよ。恩人の大切な人を守るために力を使うことの何が悪いの」
「……ったく……」
透くんの勝ち。