視えるだけじゃイヤなんです!
求める力、不穏な気配
「透くんが、入院……!?」
咲綾とのことがあった翌日。
決意も新たに倉橋家を訪れたあたしは、覚さんのお出迎えを受けた。そこで聞いたのが、透くんが入院をしたということだった。
「そうなのよ、あの子、昨日の夜にバターンって倒れて。検査を受けてるの。それで、入院」
覚さんはほおに片手をそえてため息をついた。
「今、昭が付きそってるから、今日は二人とも不在なの。ごめんなさいね」
あたしはすっと血が下がる。
もし昨日たくさん力を使っちゃったせいで透くんが倒れちゃったんだとしたら、透くんの入院はあたしのせいってことになる。
あたし……ほんとに……サイアクだ……。
黙ってしまったあたしに何を思ったのだろう、覚さんはニコッと笑いかけてくれた。
「ちょうどよかったわ! アタシ、今からスイーツを食べに行こうと思ってるの。ここみちゃん、よかったらつき合ってちょうだい!」
「えっ、スイーツですか?」
「そ! アタシおすすめのお店だから間違いないわよ~! さ、行こ行こ!」
ほとんど無理やり倉橋家から連れ出されて、向かった先は駅前だった。小さく掲げられてた看板を見て、あたしはあっと口を押える。
ここ、知ってる! 最近できたばっかりで、めっちゃ美味しいって評判のカフェだ。
覚さんは鼻歌を歌いながらドアを開ける。案の定お店は満席だ。
「ふふふ、繁盛してるじゃないの!」
そう言いながら、覚さんはずんずん奥へ進んでしまう。
「覚さん!?」
「いいから、こっちこっち」
手まねきされて、あたしは店の奥の階段をのぼった。
いいの? だってここ、明らかにバックヤード……。
階段をのぼり切った先の小さなドアを開ける。
屋根裏部屋みたいな雰囲気の部屋だった。中は結構広くて、オシャレな木のテーブルとアイアンでできたイスがちょこんと置かれている。
イスに腰かけながら、覚さんはニコッと笑った。
「このお店ね、アタシとアタシの相棒のお店なの。だから安心して?」
「え!? 覚さんの!?」
「そ。で、これがアタシの人間の方の相棒よ。よろしくね!」