視えるだけじゃイヤなんです!
「覚悟がないやつを、無理やりこっちに引きずり込むのは反対だ、という意味だ。と特にここみは、ほら。最初怖がってただろ」
「そりゃあそうだよ」

 あんなの、だれだって怖がるよ。

「だから、離れられるならその方がいいって思ったんだ。でも、ここみはちがったんだな」

 あたしはこくりとうなずいた。

「あたし、強くなりたいの。強くなって、大切な人を守りたい」

 そういうと、昭くんはくしゃっと笑う。その笑顔がなんだかまぶしくて、あたしは直視できなかった。
「うん。だから、もう反対してない。……ありがとな」

 あたしは首をふった。なんだか胸がいっぱいだ。

「ここみ、お前に話したいことがある」
 昭くんが、口調を変えた。

「透のことだ。実は……透にはもう引退してもらいたいと思っている」
「――え……?」

 透くんが、引退……?

「透の体は限界だと思う。この間も力を使って、それでこのザマだ」
「ザマって」

 だから、言葉が悪いんだよなぁ。

「ここみも気づいていると思うが、透の力は手袋で制御しているんだ。お前の狐の窓と同じ原理だな」

 あたしは頷いた。なんとなく、そんな気はしてたんだよね。透くんがあたしの前で手袋を外したのは二回だけ。あたしに狐の窓を与えてくれたときと、死神からあたしたちを守ってくれたとき。それ以外では外したところを見たことがない。

「透の力は強い。手袋をしていても霊が視えると言っていたくらいだ。手袋を外したときの透は、お前も見た通り、結界を作ることもできる。人の心を読んだり、直接話しかけたりすることもできる。だからあいつは、極力人に素手で触れないようにしているんた」
「あ……!」

 あたしは思わず声を挙げる。
 そっか。咲綾を助けようとしたときに、透くんが腕をつかんだ。そのとき頭の中で直接声がひびいたんだっけ。
 その後もそうだ。あたしと昭くんの腕を取って、咲綾が無事だというところを視せてくれた。

 自分だけじゃなくて、人にも視せることができるくらいだもん。たしかに、すごく力が強いんだろう。

「力が強い分、反動も強い。だからああやって自分がダメージを受けることになる。……俺は、それがイヤなんだ」

 昭くんはくやしそうにくちびるをかみしめた。
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