視えるだけじゃイヤなんです!
「えっ、ここみちゃん!?」
目を白黒させた透くんは、こないだ会ったときよりも線が細くなっていた。あたしはそのことに気づかないふりをして、透くんを上座に案内する。
「ここみちゃん、どうしてここに……」
「透くんが今日退院だって聞いて、かけつけてまいりましたっ!」
おどけたようにそう言うと、透くんは目を丸くして、それから笑った。
「やだ、なに、もう! なんだか盛り上がってるじゃないの! アタシもまーぜて!」
車のキーをチャラチャラ言わせながら、覚さんも便乗する。昭くんはさっきから苦笑しっぱなしだ。
それぞれ席につき、みんなでケーキに舌鼓を打つ。
覚さんのケーキは今日も絶好調においしい。最初はぎこちなかった会話も、だんだん弾むようになってくる。
「そうそう、透! ここみちゃん、今アタシのお弟子さんなのよ!」
覚さんがその言葉を言った瞬間、透くんの手からフォークが落ちた。
「えっ……」
「透、フォーク、落ちてる」
「あ、ごめん! ……ちょっとびっくりしちゃって」
透くんが困ったように笑った。
「ここみちゃん、弟子って? どういうことなの?」
あたしと覚さんは交互に事情をかいつまんで説明した。
その話を聞いて、透くんはちょっとむずかしい顔をしてしまう。
「僕は、反対だな……」
「言うと思った」
覚さんは呆れた、と言わんばかりに肩をすくめた。
「そのセリフ! ほんっと似た者兄弟ね、アンタたち。昭にも同じこと言われたのよ」
「そりゃそうだよ。だってここみちゃんは、ついこの間まで普通の生活を送ってた子だよ? こんなのに巻きこんじゃったらかわいそうだよ」
ええと、どうしよう。
あたしは口をはさむすきをうかがった。でも、なかなかうまくいかない。
「透、決めつけはよくないわ。アタシがここみちゃんに頼まれたのよ、ね?」
ナイスアシスト、覚さん。あたしは正確にパスを受け取って、透くんにうなずいてみせる。
「あたしが自分から頼んだの。もっと強くなりたいから……それで」
「でも、危険だよ! この間も、怖いめにあったばかりじゃないか。ねえ、昭、昭も反対でしょ?」
話をふられた昭くんは、ちょっと考える仕草をした。
「いや、俺は……」
「ウソ、賛成なの?」
昭くんは迷い、しっかりとうなずいた。
「ここみは、夏休みに入ってからずっとこの家に通ってきてるんだ。二週間近くも、ずっと、遅れることも休むこともせずに」
「でも……」
「だから俺は、ここみの本気を信じることにした。……それだけだ」
しん、と空気が静まりかえる。
どうしよう、気まずい。
「そっか」
やけに明るく、透くんが声を放つ。
「みんなが納得してるなら、僕はもう何も言わないよ。ごめんね、ここみちゃん」
そう言ってニコニコと笑う透くんを見て、あたしはなんだか、透くんが泣いちゃうんじゃないかって思った。
「さ、ケーキ食べましょ! まだまだあるわよ~!」
気まずい空気を引っかきまわすように、覚さんが明るく声をあげる。あたしたちはわいわいしながらケーキを食べ、お茶を飲み、お祝いパーティーを乗り切った。
目を白黒させた透くんは、こないだ会ったときよりも線が細くなっていた。あたしはそのことに気づかないふりをして、透くんを上座に案内する。
「ここみちゃん、どうしてここに……」
「透くんが今日退院だって聞いて、かけつけてまいりましたっ!」
おどけたようにそう言うと、透くんは目を丸くして、それから笑った。
「やだ、なに、もう! なんだか盛り上がってるじゃないの! アタシもまーぜて!」
車のキーをチャラチャラ言わせながら、覚さんも便乗する。昭くんはさっきから苦笑しっぱなしだ。
それぞれ席につき、みんなでケーキに舌鼓を打つ。
覚さんのケーキは今日も絶好調においしい。最初はぎこちなかった会話も、だんだん弾むようになってくる。
「そうそう、透! ここみちゃん、今アタシのお弟子さんなのよ!」
覚さんがその言葉を言った瞬間、透くんの手からフォークが落ちた。
「えっ……」
「透、フォーク、落ちてる」
「あ、ごめん! ……ちょっとびっくりしちゃって」
透くんが困ったように笑った。
「ここみちゃん、弟子って? どういうことなの?」
あたしと覚さんは交互に事情をかいつまんで説明した。
その話を聞いて、透くんはちょっとむずかしい顔をしてしまう。
「僕は、反対だな……」
「言うと思った」
覚さんは呆れた、と言わんばかりに肩をすくめた。
「そのセリフ! ほんっと似た者兄弟ね、アンタたち。昭にも同じこと言われたのよ」
「そりゃそうだよ。だってここみちゃんは、ついこの間まで普通の生活を送ってた子だよ? こんなのに巻きこんじゃったらかわいそうだよ」
ええと、どうしよう。
あたしは口をはさむすきをうかがった。でも、なかなかうまくいかない。
「透、決めつけはよくないわ。アタシがここみちゃんに頼まれたのよ、ね?」
ナイスアシスト、覚さん。あたしは正確にパスを受け取って、透くんにうなずいてみせる。
「あたしが自分から頼んだの。もっと強くなりたいから……それで」
「でも、危険だよ! この間も、怖いめにあったばかりじゃないか。ねえ、昭、昭も反対でしょ?」
話をふられた昭くんは、ちょっと考える仕草をした。
「いや、俺は……」
「ウソ、賛成なの?」
昭くんは迷い、しっかりとうなずいた。
「ここみは、夏休みに入ってからずっとこの家に通ってきてるんだ。二週間近くも、ずっと、遅れることも休むこともせずに」
「でも……」
「だから俺は、ここみの本気を信じることにした。……それだけだ」
しん、と空気が静まりかえる。
どうしよう、気まずい。
「そっか」
やけに明るく、透くんが声を放つ。
「みんなが納得してるなら、僕はもう何も言わないよ。ごめんね、ここみちゃん」
そう言ってニコニコと笑う透くんを見て、あたしはなんだか、透くんが泣いちゃうんじゃないかって思った。
「さ、ケーキ食べましょ! まだまだあるわよ~!」
気まずい空気を引っかきまわすように、覚さんが明るく声をあげる。あたしたちはわいわいしながらケーキを食べ、お茶を飲み、お祝いパーティーを乗り切った。