視えるだけじゃイヤなんです!
「この橋が、どうしたの?」
「ああ。この橋、老朽化が進んでいるから、今度取りこわす予定なんだそうだ」
「……そうなんだ」

 あたしはあらためて橋に目を向ける。確かに古いし、コケも生えてて、雨が降ったときとか、すべっちゃいそう。でも、古風でステキな橋なのに、ちょっともったいないな、なんて。

「で、この橋なんだが」
「うん」
「歩いていると突然手や足を引っ張られる、という心霊スポットでもある」
「えっ」

 そうなの? 全然知らなかった……。

「それで、この橋を取りこわしてもいいのか、という調査依頼が入ったんだ。それをお前に視てもらいたい」
 なるほどね。
「じゃ、ちょっと視てみるね」

 あたしもけっこう慣れたなあ。今の言葉なんて、完全に『こっち』の世界の人だもんね。なんだかちょっと誇らしい。
 そんなことを考えながら、あたしは狐の窓を作り、中をのぞきこんだ。

「……あれ?」
 あたしは首をひねる。
 もう一回。……やっぱり、変だ。
「昭くん……」
「どうした? 何か視えたか」
 あたしはどうしていいかわからない。だって、こんなの……。
「視えない」
「……は?」

「なんにも、視えない!」

「視えないなら、いないってことなんじゃないか?」
「ちがうの! そうじゃなくて」

 いつもはすぐに白黒に視えるのに、なんだか窓がぼやけている。ピントの合わないカメラを見ているときのように、景色がぼやけて、白黒になったり、戻ったりをくり返している。
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