視えるだけじゃイヤなんです!
「なんで自分の生き方を昭くんに背負わせようとしてるの? すごく自分勝手でわがままだよ」

 透くんの目が歪み、赤く光った。
 チリッと肌が引きつって、遅れてじんじんと痛みが広がっていく。左うで……切られた。

「昭くんの隣に立ちたいなら、立てばいいじゃない。自分の意思でやってるんだって昭くんを説得すればいいじゃない。それを飲みこんでさ、ニコニコしてさ、自分の考えをぶつけることもしないでさ! ただの察してちゃんだよ! 構ってちゃんだよ! そういうのすごくダサいと思う!」

 またチリッとした痛み。今度は右足。

「あたし、訓練するときに覚さんに言われたの。自分を犠牲にして助けてもらっても、助かった人は喜ばないって。そういうことなんじゃないの? 透くんが無茶して、死んじゃうかもしれないから、だから昭くんは透くんを遠ざけたんでしょ? その昭くんの気持ちに気づかないどころか、あたしに嫉妬までして、ほんとバカなんじゃない!?」

「ここみ、やめろ!」

「やめない! だってこんなのおかしいもん! 二人で一人、だなんて変だよ! 二人は二人で、別の人だもん。他人に自分の生き方を背負わせるなんて、ぜったいにおかしい!」

 次の瞬間。

「……え!?」

 あたしの体が、宙に浮き――そのまま畳に叩きつけられる!

「っつ……」
「ここみ!」

 痛い。ヤバ……どっか折れたかも。息がうまくできなくて、あたしはせき込む。
 昭くんに支えられて、あたしはなんとか体を起こした。

 透くんは、もう真っ黒だった。
 メラメラと炎のようにゆらめく黒い影が、透くんの姿をすっかりのみこんでしまっている。

「……君に僕の気持ちがわかるか」
「……わかんないよ……他人だもん……」

 勝手に出てくる涙を、あたしはぐいっと手でぬぐった。

「だからあたしは、自分で決めたことをするの」

 そうだよ。あたし、だからこの力を欲しいって思ったんだ。
 体中が痛い。手も足も血が出てて、息もうまくできない。でも、あたし負けないんだ。負けてたまるか。だって、あたし……!

「あたし、透くんを助けたい」

 目の奥が熱い。あふれ出る感情のままに、あたしは叫んだ。


「透くんが大切なの! だから、助けたいんだよ、透くん……!」


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