視えるだけじゃイヤなんです!
「死神が木札なんて作ると思う? 僕は僕の意思で、ここみちゃんに呪いをかけたんだよ。その結果、隙をつかれて死神に魅入られちゃったワケだけど。……そのきっかけを作ったのは僕だ」

 透くんは意地悪く笑った。

「どう? 幻滅したでしょ。僕は、本当はこんなやつなんだよ」

 あたしは沈黙した。
 ショックを受けなかったわけじゃない。透くんはあたしを積極的に呪って、その結果あたしは視えなくなったってことだもん。悪意を向けられるのは、ショックに決まってる。

 でも、あたし知ってるから。

「透くんは優しいよ」
「は? まだ寝ぼけたこと言ってるの?」
「透くんは優しい。だって、死神に操られてても、あたしたちの心を読んだりしなかったじゃない」

 死神がついていた透くんは手袋を外していた。その気になれば、あたしや昭くんの心を読むことだってできたはずなのに。

「それをしなかったのは、きっと透くんががんばって、死神に力を使われないように守っていたからなんじゃないの?」

 そう言うと、透くんは目を伏せてクスッと笑った。

「ほんと、都合のいいことばっかり考えるね、ここみちゃんって」

 そうかな。

「自分の体を自分じゃないやつに使われるのがイヤだっただけだよ。だから、別に昭やここみちゃんを守ろうって思ったわけじゃない」

 うなぎがキュルルっと鳴く。うん、わかってるようなぎ。透くんって、すごくウソつきだもんね。

「あたし、ひとつわかったことがある。透くんってすごく臆病なんだ」
「はっ……!?」
「あまのじゃくだし」
「なに、ケンカ売ってんの?」
「だからそうやって自分の心をずっと隠してたんでしょ? イイ子の仮面かぶってニコニコしてさ。影で人をこそこそ呪ったりして。ネクラだよね」

 透くんの顔が悔しそうに歪んだ。

「やっぱり殺しておけばよかったな」
「できもしないこと言わないでよ」
「できないかどうか、試してみようか?」
「やめとこ。だって、ここ死後の世界なんでしょ?」

 あたしたちは顔を見合わせて、プッと吹き出した。

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