視えるだけじゃイヤなんです!
 改めて、あたしは透くんを見る。キレイな白い髪。やわらかくて甘い声。それなのに、心の中では激しい感情を持っている、危なっかしくて不思議な男の子。

「透くん、あたし、ちゃんとケンカしたい」
「ここみちゃん……?」

 さよならなんてしたくないよ、透くん。

「生きてよ。死人とケンカだなんて、フェアじゃない」
「わかって言ってる? 僕はまたおんなじことをするかもしれないよ」
「うん、そのときはめいっぱいケンカしよう。二人でギャンギャン言ってさ、昭くんを困らせてやろうよ」

 透くんは泣き笑いの表情になった。

「ほんと、ここみちゃんって、クッソムカつく」

 それがあまりにもいい表情だったから、あたしは声を挙げて笑った。
 ニコニコ優しい透くんよりも、言葉が悪くて、悪態ついてる透くんの方がいい、なんて。あたしも変だと思うけど。
 でも、自然体でいてくれてるってことが本当にうれしいんだ。

「あたし、今の透くんの方が好きだなあ」
「……趣味悪いね」
 透くんはクスッと笑って、手の甲で涙をぬぐった。

「しかたない。じゃあ、ちょっとがんばってみようかな」

 あたしの頭の中で、またぱちりと光が弾けた。

「ここみちゃん」

 うなぎがくるっと回転し、あたしの肩に飛び乗った。

「お守りを勝手に開けたお仕置き、まだすんでないからね」
 ……えっ? はっ!?
「僕が生き返ったらそれ相応のことをしてもらうから、覚悟しておくように」

 うわ、サイアク!
 あたしは笑って、こう言ってやった。

「受けて立つ! そっちも覚悟しておくように!」

 視界がゆっくりぼやけていく。
 まるで絵の具が水ににじんでいくように、風景が歪み、色を変えていく。


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