エリートSPはウブな令嬢を甘く激しく奪いたい~すべてをかけて君を愛し抜く~
 間取りは三LDKですべて六畳の畳の部屋。一階の角部屋で隣の一軒家には大家さんが住んでおり、スーパーも徒歩圏内だ。

 歩道には街灯がついているし、人通りも多いからひとりでも安心して暮らせている。

 だけど私が結婚して父の病状も回復しなかったら、ここは引き払うことになるだろう。長年住み慣れた場所であり、母と家族三人で暮らした思い出の家から離れなければならないのは寂しいものがある。

 とはいえ、結婚後も久次さんに賃貸料を支払い続けてもらうわけにはいかない。そう思うと結婚したら本当に私には帰る場所がなくなってしまうんだ。

 由香里と会って話をしてせっかく前向きな気持ちになれていたというのに、ひとりになるとマイナスなことばかり考えてしまう。

 これではだめだと自分を奮い立たせ、アパートの敷地内に入ったところで私の家の玄関前に見知らぬスーツを着た男性がいることに気づいた。

 思わず物陰に隠れて相手の様子を窺う。

 いったい誰だろうか。暗くて顔はよく見えないけど、すごく背が高い人だ。一五八センチしかない私から見るに、恐らく一八五センチ以上はありそう。
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