エリートSPはウブな令嬢を甘く激しく奪いたい～すべてをかけて君を愛し抜く～

　誰も口を開かず沈黙の時が流れること数分。由香里は深く息を吐いて私を見つめた。

「正直、まだ信じられないし信じたくないって気持ちが大きいけど、でも紅葉が冗談でこんな話をするとは思えないし、きっと私のことを考えて打ち明けてくれたんだよね」

「……うん。後から事実を知ったら悲しむだろうし、なにより由香里なら受け止めることができると思ったから話したの」

　目を逸らすことなく伝えると、由香里は頬を緩めた。

「そうだと思った。……紅葉が知っていたのに私に話してくれなかったら、絶対私、怒っていたよ」

　冗談めいて言う彼女の瞳からは涙が零れ落ちた。

「あれ？　ごめん、なんでだろう。悲しくなんてないのに涙が止まらないや」

　必死に涙を拭う姿を見ていたら、私まで目頭が熱くなっていく。

「由香里、無理しないで。いいんだよ、泣いても」

　立ち上がって彼女のもとへ向かい、ギュッと抱きしめた。

「こんな時に気の利いた言葉をかけてあげられなくてごめんね」

「ううん、そんなのいらないよ。なんかもう、本当にどうしようもない父親だったんだって思うと情けないし、木嶋さんのお父様にも申し訳なくて。でもね、それでもやっぱり悲しいよ」

「うん……うん」