エリートSPはウブな令嬢を甘く激しく奪いたい~すべてをかけて君を愛し抜く~
 警備員までも会場内の鎮圧に駆り出されているようだ。

「警察も無能だな、易々と俺を逃げすのだから」

 嘲笑いながら廊下を突き進み、久次さんは非常階段に向かう。

「いいか? 俺の足手まといになるなよ。……その靴じゃ階段を降りるのに時間がかかるだろうから脱げ」

「……はい」

 言われるがままヒールを脱ぐと、久次さんは歩くスピードを速めた。周囲を警戒しながら非常階段へと続くドアを開ける。

「ほら、モタモタするな」

 ずっと掴まれっぱなしの手首は血が流れ続けていて、痛みも鈍くなってきた。それでも久次さんは私を離してくれなかった。

 階段を駆け下りて一階に着くと、非常階段から繋がっている非常口を抜けて外に出た。

 大通りに出るとすぐに久次さんはタクシーを停める。

「おい、早く乗れ」

 どうしよう、言われるがまま乗ってしまったら大変なことにならない? もう逃げられない気がしてする。

 躊躇していると久次さんは苛立ち、私の背中を押した。

「早くしろ」

「キャッ!?」

 そのまま押し込まれそうになり、もうだめだ。逃げられないと覚悟を決めてタクシーに乗った時。
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