エリートSPはウブな令嬢を甘く激しく奪いたい~すべてをかけて君を愛し抜く~
「どうぞお召し上がりください」

「ありがとうございます」

 最後の日の朝、静馬さんが作ってくれたのはオムレツと野菜やハムなどのサンドイッチだった。

「いただきます」

「いただきます」

 ふたりで向かい合って座り、手を合わせて食べるのも今日で最後だと思うと寂しい。

「おいしいです、静馬さん」

「よかったです」

 味の感想を伝えれば、彼は目を細める。

 静馬さんが自分のことを〝俺〟と言ったのも、敬語じゃなかったのも久次さんから助けてくれたあの時だけ。

 すっかり今まで通りの話口調で、ちょっぴり残念に思う。静馬さんが〝私〟じゃなくて〝俺〟と言っていただけでカッコよくて、敬語じゃないのもよかった。

 もう私と静馬さんはSPと護衛対象の関係ではなくなるし、以前の約束通りに私のことを〝紅葉〟と呼んでくれるだろうか?

 最後にお願いしてもいいかな? 呼んでくださいって。

 そんなことを考えていたらすっかり手は止まってしまっていた。
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