エリートSPはウブな令嬢を甘く激しく奪いたい~すべてをかけて君を愛し抜く~
「この指輪も今日返すべきだよね」

 あの日から返しそびれていたけれど、私にはもらう資格がない。それにこの指輪を持っていたら、いつまで経っても静馬さんを忘れることなどできなくなりそうだもの。

 バッグにプレゼントするネクタイピンとともに指輪も入れて、少し早めに家を出た。


「遅いぞ、紅葉」

 約束の時間より十五分も早いというのに、すでに待ち合わせ場所のホテルの部屋に由香里の姿があって私を出迎えた。

「由香里が早すぎなんでしょ? 何時からいたの?」

「えっと三時間前からかな?」

「そんなに前から?」

 びっくりしながらも荷物をソファの上に置いて腰を下ろした。

「ひとりで家にいても暇だし、いつマスコミが嗅ぎつけてマンションに押しかけてくるかわからないでしょ? その点、ホテルなら安心じゃない」

 由香里と旦那様は事件から五日経っても、いまだにマスコミに追われていた。会社にまで押しかけて来た時に旦那様がしっかりと対応した代わりに、由香里のことはそっとしてほしいとお願いしてくれたおかげで世論も味方につき、以前よりは嗅ぎまわるマスコミが減ったようだけど、まだ油断できないそう。

 だから今日も安全なホテルの部屋でランチをする約束をした。
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