エリートSPはウブな令嬢を甘く激しく奪いたい~すべてをかけて君を愛し抜く~
 ボソッと言われた言葉が聞き取れなくて「なんて言ったの?」と聞き返したものの、由香里は「なんでもない」とごまかす。

「さて、そろそろランチにしようか。きっとすごいご馳走なんだろうな」

 浮き足立てながら由香里が内線をかけると、ほどなくして彼女の言う通り豪華なオードブルが運ばれてきた。

「おいしい~! 紅葉、お肉柔らかいから食べてみてよ」

「うん」

 静馬さんが手配してくれた料理は本当にどれもおいしくて、私と由香里は楽しい時間を過ごすことができた。


「もうこんな時間か。あっという間だったね」

「そうだね」

 時刻は十七時過ぎ。ホテルスタッフには今夜はスイートルームに宿泊の予約は入っていないから、何時までいてもいいと言ってくれたけれど、そろそろ心配している由香里の旦那様が迎えに来てくれるらしい。

「ニューヨークに発つのは来月だから、それまでに何回か会いたいね」

「うん、絶対だよ」

 今日が最後にならないでほしい。由香里の気持ちを大切にしたいし、たった数年間かもしれないけれど、すぐに会えない距離に行ってしまうのはやっぱり寂しい。
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