エリートSPはウブな令嬢を甘く激しく奪いたい~すべてをかけて君を愛し抜く~
 こんな話を聞くと私は木嶋さんに関して、なにも知らないんだなって痛感する。

 これまで彼がどんな人生を歩んできたのかはもちろん、なにに興味があってどんなことが好きなのか、ほとんど知らない。

 知っているのは好き嫌いなくなんでも食べることと、器用な人ですべてにおいてソツなくこなすことができること。それと笑顔が素敵なことくらいだ。

「正義感に溢れていて真面目で誰からも慕われていたんだって。加えてあの容姿でしょ? かなりモテたらしいけど、仕事人間で女の影もなかったらしいよ。ちなみに溝口さん情報によると結婚はもちろん、恋人もいないらしい」

「そ、そう、なんだ」

 いつの間にか前のめりになって顔を近づけては力説する由香里に、私は思いっきり身体をのけ反らせた。

「だから紅葉! 今がチャンスよ」

「チャンスって……?」

 小首を傾げる私に、由香里は焦れったそうに続けた。
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