忘れさせ屋のドロップス
第2章 同棲開始
「おい、起きろ!」
カロン……という誰かの口内から響く音と甘い香りに私はねぼけ目を擦った。いつの間にか眠っていたみたいだ。
「わっ」
思わず黒い毛布を被り直す。綺麗な遥の顔が吐息がかかるほど近かったから。
「は?ふざけんな、起きろって言ってんだよ、俺は!」
無理やり毛布が剥ぎ取られた。
「やだ!返して」
「何が返してだ!俺のだろ、ばーか」
朝から降ってくる粗野な言葉に実感が湧いてくる。そうだ、私はあの家を出たんだった。息の詰まる様な、大嫌いなあの人の家から。
「顔洗ったら、さっさと来いよ。冷めるから」
そう言うと、遥は私に背を向けて隣の部屋のキッチンへと足を向けた。
(いつの間に帰ってきたんだろう)
遥は、昨夜の白いシャツと、黒のパンツから黒のスウェットの上下に着替えていた。
シャワールームに付いている小さな洗面所で顔を洗うと洗濯したてのタオルが置いてある。昨日寝る前はなかったから、遥が置いてくれたのだろう。
半開きの寝室のドアを開けると甘い、いい香りが漂った。
「座れよ」
遥は口に目玉焼きを放り込みながら視線を真向かいの木製椅子に向けた。
「わ。美味しそう」
「冷蔵庫の中のあまりもんだけど」
テーブルには白いプレートにフレンチトーストと目玉焼き、レタスにミニトマトまで乗っかっている。ご丁寧にオニオンスープ付きだ。
指定された『spring』と彫られた方の椅子に座ると私は手を合わせた。
「いた、だきます」
「どーぞ」
ぱくんと一口食べる。こんなちゃんとしたご飯、それも誰かと一緒に食べるのはいつぶりだろうか。いつも一人だったからご飯も適当なものしか作ってなかった。
カロン……という誰かの口内から響く音と甘い香りに私はねぼけ目を擦った。いつの間にか眠っていたみたいだ。
「わっ」
思わず黒い毛布を被り直す。綺麗な遥の顔が吐息がかかるほど近かったから。
「は?ふざけんな、起きろって言ってんだよ、俺は!」
無理やり毛布が剥ぎ取られた。
「やだ!返して」
「何が返してだ!俺のだろ、ばーか」
朝から降ってくる粗野な言葉に実感が湧いてくる。そうだ、私はあの家を出たんだった。息の詰まる様な、大嫌いなあの人の家から。
「顔洗ったら、さっさと来いよ。冷めるから」
そう言うと、遥は私に背を向けて隣の部屋のキッチンへと足を向けた。
(いつの間に帰ってきたんだろう)
遥は、昨夜の白いシャツと、黒のパンツから黒のスウェットの上下に着替えていた。
シャワールームに付いている小さな洗面所で顔を洗うと洗濯したてのタオルが置いてある。昨日寝る前はなかったから、遥が置いてくれたのだろう。
半開きの寝室のドアを開けると甘い、いい香りが漂った。
「座れよ」
遥は口に目玉焼きを放り込みながら視線を真向かいの木製椅子に向けた。
「わ。美味しそう」
「冷蔵庫の中のあまりもんだけど」
テーブルには白いプレートにフレンチトーストと目玉焼き、レタスにミニトマトまで乗っかっている。ご丁寧にオニオンスープ付きだ。
指定された『spring』と彫られた方の椅子に座ると私は手を合わせた。
「いた、だきます」
「どーぞ」
ぱくんと一口食べる。こんなちゃんとしたご飯、それも誰かと一緒に食べるのはいつぶりだろうか。いつも一人だったからご飯も適当なものしか作ってなかった。