忘れさせ屋のドロップス
第9章 結ばれた想い
遥に手を引かれて、いつもの家まで帰ってきた。扉の前に誰も居ないことに心から安堵した。
気を使った遥が簡単に夜ご飯を作ってくれて、二人で食べると、そのまま私は先にシャワーを浴びた。
ドライヤーで髪を乾かすと、私はベッドに座って真っ暗なスマホを見つめる。
「電源、明日はつけろよ」
シャワールームから出てきて、タオルで赤茶の髪を拭きながら遥が私に言った。
「でも……GPSで此処の住所が……」
すぐに声が震える。
「調べてんなら今更……一緒だからさ、あと……一度ちゃんと話した方がいいから」
遥が寝室の電気をリモコンで消すとベッドにゴロンと転がった。
「そんな顔すんなよ」
「だって……」
すぐに不安で押しつぶされそうになる。
あの家に帰りたくなくて。ずっと遥の隣に居たくて。
「おいで」
私の手首を遥の掌が引き寄せるとブランケットで私を包み込んだ。
遥は右手で私の後頭部を髪を漉くように撫でた。
とくんとくんと遥の心臓の音が心地よくて、同じシャンプーの匂いがくすぐったい。
遥が指先で私の唇に触れた。
「傷残らないといいけどな」
「……あ、大丈夫、ただの切り傷みたいなモノだから」
「……ただの、じゃないだろ。俺が言ってんのは両方の意味」
顔の傷と心の傷、のことだ。
「……大丈夫、だよ」
遥は私の額に唇を寄せた。
「有桜、ごめんな……」
「遥?」
「有桜がドロップスの副作用で俺の事忘れるくらい、しんどかったのに、気づいてやれなかった。……いっつも泣いてたな、ごめんな」
「違っ……私が黙ってたから……」
遥のせいじゃない。
私が、あの人のこと黙ってたから。それは私が……。
遥が勝手に溢れた涙をそっと掬った。
「俺、有桜の側から離れないから。何処にも行かないからさ、……俺の側に居てくれる?」
気を使った遥が簡単に夜ご飯を作ってくれて、二人で食べると、そのまま私は先にシャワーを浴びた。
ドライヤーで髪を乾かすと、私はベッドに座って真っ暗なスマホを見つめる。
「電源、明日はつけろよ」
シャワールームから出てきて、タオルで赤茶の髪を拭きながら遥が私に言った。
「でも……GPSで此処の住所が……」
すぐに声が震える。
「調べてんなら今更……一緒だからさ、あと……一度ちゃんと話した方がいいから」
遥が寝室の電気をリモコンで消すとベッドにゴロンと転がった。
「そんな顔すんなよ」
「だって……」
すぐに不安で押しつぶされそうになる。
あの家に帰りたくなくて。ずっと遥の隣に居たくて。
「おいで」
私の手首を遥の掌が引き寄せるとブランケットで私を包み込んだ。
遥は右手で私の後頭部を髪を漉くように撫でた。
とくんとくんと遥の心臓の音が心地よくて、同じシャンプーの匂いがくすぐったい。
遥が指先で私の唇に触れた。
「傷残らないといいけどな」
「……あ、大丈夫、ただの切り傷みたいなモノだから」
「……ただの、じゃないだろ。俺が言ってんのは両方の意味」
顔の傷と心の傷、のことだ。
「……大丈夫、だよ」
遥は私の額に唇を寄せた。
「有桜、ごめんな……」
「遥?」
「有桜がドロップスの副作用で俺の事忘れるくらい、しんどかったのに、気づいてやれなかった。……いっつも泣いてたな、ごめんな」
「違っ……私が黙ってたから……」
遥のせいじゃない。
私が、あの人のこと黙ってたから。それは私が……。
遥が勝手に溢れた涙をそっと掬った。
「俺、有桜の側から離れないから。何処にも行かないからさ、……俺の側に居てくれる?」