忘れさせ屋のドロップス
ーーーー聞き間違いかと思った。遥が私の側に居てくれて、私も遥の側に居てもいいの?
「私……何にも、できないのにいいの?……」
「そんなことない。俺のしんどいのを有桜がいつも貰ってくれてたから。俺……有桜をちゃんと、本当に好きだって言えるまで待たせるかもしれない。……でもいつも有桜を見てるから。有桜が大切なんだ」
遥が私を真っ直ぐに見つめた。私の瞳はすぐに涙で遥がぼやけてくる。
「泣くなよ」
遥が困ったように笑った。
「遥が……好きだよ」
「有桜……」
遥がゆっくりと私を組み敷いた。
そのまま、遥の唇が私に重ねられる。遥の薄茶色瞳の中に小さく私が映り込んだ。
「……怖くない?」
その意味は私でもすぐに分かった。私は遥の頬に触れた。
「遥がいい」
遥が好き。初めてキスをするのも、触れられるのも、全部遥がいいの。
「有桜……優しくするから……」
遥の唇が再び重ねられる。
触れるだけのキスじゃなくて深くて、互いの熱を交換するような大人のキスだった。