忘れさせ屋のドロップス
「有桜?」 

「有桜ちゃん?大丈夫?」

有桜がひどく怯えているのが分かった。
 

「お願い!お母さん、やめて!言わないでっ!」

母親が少し驚いた顔をしていた。

ーーーー言わないで?……何を?


「有桜大丈夫か?」 

俺は有桜を覗き込んだ。有桜がこんな風に感情的に泣き叫ぶ姿は初めて見た。

「ごめんなさ……遥……ひっく」

「え?何言って……?」

「有桜、あなた言ってなかったのね」 

有桜が、俺の裾から手を離して、母親に縋り付くように泣き出した。


「お母さん!やめて!お願い言わないでっ!」
  


「……高校生だってこと」


母親の声が静かに響いた。


「え?」

俺は、思わず声が出た。


ーーーー高校生?有桜が?

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