忘れさせ屋のドロップス
「でも、さっき言われちゃいました。泣いて、わかって貰おうとするなって。もう二度と泣くなって」

「それはまあ、随分なことを遥も言ったもんだね、自分のこと棚に上げて」

ミルクティーを口に含んだ渚さんが噴き出しそうになった。

「笑い事じゃないです。その、遥、すごく、怒ってたし。私、やっぱり」

「まだ2日目じゃん。もうちょっと遥の側にいてやってよ」

「え?でも」

明らかに遥は私が居ることを迷惑がって、嫌悪感すら感じてるのに。それに無理やり側に置いて貰ってるのは私の方だ。

「フレンチトースト!」

ぱちんと指を鳴らした。目を丸くした私を見て渚さんが、あははっと笑った。

「美味しかったね。遥の作ったの食べたのなんて久しぶり。さて、問題。何で遥が二年ぶりにフレンチトースト作ったと思う?」

人差し指をたてた渚さんに首を左右に振る。

「泣き虫の有桜ちゃんに食べて欲しかったから」

「……わた、し?」

「そ。フレンチトーストってね。水使わないでしょ?昔ある子がすっごく泣き虫で、よく泣いてた。それを見かねた遥がね、見よう見まねでフレンチトースト作ったの。
泣くと身体の水分でるけど、フレンチトーストは、水つかってないから涙が出なくなるはずだってね」

やっぱ女子だね、と渚さんが笑った。そして、

「遥、必ず帰ってくるから、待っててやって欲しいんだ」

と、真面目な顔でそう言った。

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