忘れさせ屋のドロップス
「俺も会いたかった」

遥が、私の頬に触れて涙を掬う。

遥の薄茶色の瞳が、私の瞳を真っ直ぐに見つめた。

「有桜が好きだよ」

ーーーーずっとずっと聞きたかった言葉。
遥が好きで、私だけを見て欲しくて。

「遥……」

「やっと言えた……俺、忘れたくても、『忘れられない』くらい、有桜のことが好きだから」


遥はそのまま、私の額ににキスを落とした。

嬉しくて、声が出なくて、頷いた途端、また雫が溢れた。


「ばーか、泣くな」
遥が意地悪く笑う。

「……遥、もう離さないで」

私の伸ばした両手は、遥がしっかり掴まえて、身体ごと抱きしめる。

「有桜が、どんなに嫌だって言っても、離してやんないから」

桜の樹の下で重ねたキスは、甘い甘い遥のドロップスの味がした。
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