忘れさせ屋のドロップス
「口開けろ」
半ば脅迫めいた口調に恐る恐る口を開けるとぽいと放り込まれる。
カロン……コロン……。
甘くて、小さな頃良く食べた懐かしい味のドロップス。懐かしいさを思い出したからなのか、甘い口内の優しい刺激にホッとしたのか私の涙は止まった。
「はぁぁ……涙止まったな、ってゆーか俺が止めてやった。有り難く思え」
男は、ずいとこちらに顔を寄せるとサングラスを外した。綺麗な飴玉の様な茶褐色の瞳だった。
長い睫毛に切長の奥二重に見つめられて、思わず顔が熱くなった。私が勝手に合成して、作り上げていた顔より遥かに綺麗な顔だった。
「で?オマエ名前は?此処は忘れさせ屋だ。金と引き換えにお前の忘れたい事、一つだけ『忘れさせて』やるよ」
この時はまだ知らなかった。私が一つだけ『忘れたい』と願うのが、彼になるなんて。
「鈴木、有桜有る無しの有るに、桜……です」
「初めまして。俺は遥。佐藤さんの佐藤に、はるか彼方の遥」
ーーーーこれが私と『忘れさせ屋』遥の出会いだった。
半ば脅迫めいた口調に恐る恐る口を開けるとぽいと放り込まれる。
カロン……コロン……。
甘くて、小さな頃良く食べた懐かしい味のドロップス。懐かしいさを思い出したからなのか、甘い口内の優しい刺激にホッとしたのか私の涙は止まった。
「はぁぁ……涙止まったな、ってゆーか俺が止めてやった。有り難く思え」
男は、ずいとこちらに顔を寄せるとサングラスを外した。綺麗な飴玉の様な茶褐色の瞳だった。
長い睫毛に切長の奥二重に見つめられて、思わず顔が熱くなった。私が勝手に合成して、作り上げていた顔より遥かに綺麗な顔だった。
「で?オマエ名前は?此処は忘れさせ屋だ。金と引き換えにお前の忘れたい事、一つだけ『忘れさせて』やるよ」
この時はまだ知らなかった。私が一つだけ『忘れたい』と願うのが、彼になるなんて。
「鈴木、有桜有る無しの有るに、桜……です」
「初めまして。俺は遥。佐藤さんの佐藤に、はるか彼方の遥」
ーーーーこれが私と『忘れさせ屋』遥の出会いだった。