忘れさせ屋のドロップス
2階の『忘れさせ屋』に辿り着いた時、木製扉に背を預けて長身の黒髪の男性が腕を組んで立っているのが見えた。
お客様……?
「遥!」
「うわっ!」
男性は、こちらに歩み寄ると、ガバっと勢いよく遥に抱きついた。
わ、忘れさせ屋って……男性も、利用しているということなんだろうか?
「ちょ、待って!離せ」
「遥ー!もう二時間以上、俺は待ってたんだけど」
「知らねーよ、勝手に待つな!ひっついてくんな!」
遥が、暴れて抵抗するのも気にも留めずに、男性は泣きマネをしながら、遥の背中を両腕で力ずくで包んだ。
長身の遥よりも、もうすこしだけ背が高い。
「遥ー。お前相変わらずいい匂いすんな!ドロップスのせいか?」
遥の首元に、顔をうずめている。
「変態!離せ!変なことゆーなよな!有桜が見てんだろ!」
ようやく、スーツ姿のその男性と私は、パチリと目が合った。
模範的な二重瞼に、長めの前髪の端正な顔立ちをしている。
「あ!この子が有桜ちゃん!」
するりと遥から手を離すと、あっという間に男性が、今度は私を抱きしめた。
「初めてまして、桐谷秋介です!26歳、独身です!」
一瞬時が止まる……。男の人に抱きしめられたのは初めて……
「やめろ!有桜が固まってんだろ!」
慌てて遥が、男性から私を引き剥がす。
「ったく、何の用だよ?姉貴と喧嘩?」
秋介は、私達を見ながら、こくんと力なく頷いた。
お客様……?
「遥!」
「うわっ!」
男性は、こちらに歩み寄ると、ガバっと勢いよく遥に抱きついた。
わ、忘れさせ屋って……男性も、利用しているということなんだろうか?
「ちょ、待って!離せ」
「遥ー!もう二時間以上、俺は待ってたんだけど」
「知らねーよ、勝手に待つな!ひっついてくんな!」
遥が、暴れて抵抗するのも気にも留めずに、男性は泣きマネをしながら、遥の背中を両腕で力ずくで包んだ。
長身の遥よりも、もうすこしだけ背が高い。
「遥ー。お前相変わらずいい匂いすんな!ドロップスのせいか?」
遥の首元に、顔をうずめている。
「変態!離せ!変なことゆーなよな!有桜が見てんだろ!」
ようやく、スーツ姿のその男性と私は、パチリと目が合った。
模範的な二重瞼に、長めの前髪の端正な顔立ちをしている。
「あ!この子が有桜ちゃん!」
するりと遥から手を離すと、あっという間に男性が、今度は私を抱きしめた。
「初めてまして、桐谷秋介です!26歳、独身です!」
一瞬時が止まる……。男の人に抱きしめられたのは初めて……
「やめろ!有桜が固まってんだろ!」
慌てて遥が、男性から私を引き剥がす。
「ったく、何の用だよ?姉貴と喧嘩?」
秋介は、私達を見ながら、こくんと力なく頷いた。