忘れさせ屋のドロップス
第3章 戸惑い
「ごちそーさまでした」
朝から作った、たまごサンドとトマトスープ、胡瓜の入ったマカロニサラダは五分ほどで遥のお腹に消えた。
ーーーー遥と暮らし始めてから、あっという間に3週間が過ぎていた。
「は、早いね」
遥を見ながら、頭で考えていたら思わず、声が出た。両方の意味で。
「あ、美味かったから」
コロンとドロップスを転がすと遥は冷蔵庫から追加のアイスコーヒーを取り出した。
「有桜は?」
見るとアイスコーヒーを片手に遥がこちらを見ている。
「ありがとう、あの、私自分で」
「ほんと、有桜ってさー」
私の空のグラスを取り上げると、そう言いながらアイスコーヒーに牛乳をたっぷり入れて、コトリと私の前にグラスを置いた。
ブラックでしか飲まない遥に手間をかけさせたら悪いと思って、自分で入れようと思ったのに。
「ありがとう」
「言えばいーだろ」
「え?」
「牛乳いっぱい、いれなきゃ飲めないって」
ピーーーッと終了音が鳴ると同時に、遥が洗濯機を開ける。
「あ、私やるから」
「いいよ、今、暇だし」
洗濯機に向かう遥を見てふと思い出す。いつも洗濯は私の担当だ。干すのも私。だからいつもと同じで私のも一緒に洗ってる!
「まって!遥!」
洗濯機から洗濯物を取り出して、カゴにいれている遥の手に思わずしがみついた。
「何だよ!ひっついてくんな!」
「違う違う!」
「有桜!ちょ、手離せよ」
「ダメ!《《私のがあるの》》!」
真っ赤になった私をみて遥が、ぶはっと笑った。
「必死じゃん」
ーーーーカラン
「朝から楽しそうな声が聞こえてるけど?」
白のブラウスに黒のタイトスカート姿の渚さんが、入ってくる。