忘れさせ屋のドロップス
「遥、どうしたら、もっと、楽になりますか?」

 吉野さんが困ったように笑う。

「ありさちゃんが、楽になれば、はるも楽になるんじゃないのかい?」

私が楽に……?

「無理せずに、はるに甘えられるところは甘えて、はるが苦しそうにしたら、ただ側に居てあげたらいいんじゃないかい?」

「……でも、私、何もできない、から」

「……はるの、ありさちゃんを見る目は、少しだけ、なつきちゃんを見る目と似ててね。はるは、ありさちゃんと暮らして、救われてる部分はあるんじゃないかね、前より少しだけ、はるは笑うようになったから」


ーーーーそんなこと……あるのだろうか。 

 遥は、私といて、なつきさんのことを少しだけ忘れて楽になれているのだろうか。

 助けてもらうばかりの私が、遥に何かしてあげることなんて、できるんだろうか。

「大丈夫、はるはもう、ありさちゃんと暮らすことが当たり前になってるから。他人の当たり前を変えることってすごいことだと思わないかい?ありさちゃんは、もう、はるの当たり前を変えてるんだよ」

吉野さんは、皺皺の顔をくしゃっと寄せて、微笑んだ。
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