忘れさせ屋のドロップス
「あんな、変な言い方すんなよな。俺はアンタの浮気性の旦那の代わりに金貰って相手するだけだろ。お互いプライベートには干渉しない約束だったよな?」

「……最近変わったわよね、遥。前なら、会いたいって言えばすぐに来てくれたのに」


「ルール破んなよ。俺は誰とも本気にならない。金と身体の関係。あと、プライベートには立ち入らないって言っただろーが」

遥が女性の腕を掴んだ。

「外で話そう」

「何?此処でいいでしょ、てゆーか、この子とも本気じゃないのよね?何で一緒に住んでる訳?」


ーーーー本気じゃない。そうだ、それ以前に遥は私のことなんて見ていないんだから。

それでも言葉に吐かれて聞くと堪らなく苦しくなった。


「いいから、来いよ」

 遥は私を見ると、すぐ帰るから、それだけ言うと二人で扉を出て行った。



ーーーーすぐにまたカランと扉が開いて、慌てて涙を拭った。

でもその人は、私の涙に気付いて、駆け寄ってきてくれる。

「有桜ちゃん?どした?」

 カツカツとヒールを鳴らすと、そのまま私を抱きしめた。

「……なぎ……ささん」

「うん、大丈夫だよ。大丈夫」

 いつも遥がしてくれるみたいに、背中を優しく摩ってくれる。私は子供みたいに泣いた。

 渚さんに手を引かれてダイニングテーブルの椅子に腰掛けた。

 繋がれた手があったかくて、それだけでまた涙が溢れそうだった。目の前にあたたかいホットミルクが、ことりと置かれる。

 渚さんもホットミルクを片手に向かいの『summer』の椅子に座った。

「何が……あった?」

私を綺麗な瞳が優しく覗き込んだ。

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