忘れさせ屋のドロップス
「姉貴、きてたんだ」
遥の顔が何だか見れなくて、私は俯いた。
「遥、どう言うこと?何があった?」
「別に」
渚さんが立ち上がって、遥の胸元を掴んだ。
「遥、いいかげんにしなよ?」
「離せよ、姉貴に関係ねーだろ!」
「関係ない?よくそんなガキみたいなことが言えるね?遥?言ったよね。早くそんな、馬鹿げたコト、辞めなって。大体有桜ちゃんを何だと思ってる訳?泣かせてばっかりで、遥は平気なの?」
渚さんの遥の胸元を掴む手が、強くなるのが分かった。
ーーーー私は思わず立ち上がっていた。
「あの、やめて下さい!遥は悪くなく……」
「平気な訳ねぇだろ!」
遥の怒鳴り声に身体が固まった。
「大きな声だすな!ガキかよ。とりあえず有桜ちゃんは家で預かるから、もうアンタには任せられない!」
渚さんが、おいで、と私の右手をひいた。
遥の横を通り過ぎる時に、遥が、私の左の手首を掴んだ。
「……遥」
見上げた遥は唇を噛み締めて、何かを堪えているように見えた。
「行くな」
「あんたね、言ってることとやってること矛盾してるの分かってんの?」
渚さんが遥と目線を合わせるように、私の前に立った。
「うるせ。……有桜と話しがしたい」
「遥……、うん……分かった……」
「有桜ちゃん、無理しなくていいんだよ?」
渚さんは優しい。遥と一緒で。
「私も……遥と話したいから」
渚さんが、話が終わったら、アタシん家に来て、まってるから。といい残して、私と遥を置いて部屋から出て行った。