忘れさせ屋のドロップス

ーーーーだって何もしてやれないから。想いに応えてやれないから。もう泣かせたくないのに。
 

「やだ!」 


 俺は嫌がる有桜の手首を強く掴んで、立ち上がらせた。


そのまま、有桜の細い手首を強く握ったまま寝室のドアを開ける。

有桜をそのまま乱暴にベッドに押し付けた。スプリングが、ギシリと音を立てて大きく沈む。

「遥っ……やだ!」

 俺は、有桜に跨ると押し付けた手首をそのままに、空いている掌で無理やり顎を持ち上げる。

真っ赤な瞳で涙をいっぱい溜めた有桜と目がかち合った。

俺は、強引に有桜の唇に自分の唇を重ねた。

「ちゃんと口開けろよ」 

「……や……だっ……やめ」

 無理やり親指を差し入れて口を開けさせる。

 何度も深く重ねて、そのまま、有桜の白く細い首筋に唇を当てて、スウェットを捲り上げた。

「や……めてっ」

 有桜の真っ白な肌を眺めながら、背中から手をまわして有桜に触れる。

 身体を捩るようにして有桜が俺の腕を掴む。

「……は、る……やだっ……」

「暴れんな」

 露わになった胸元に口付けながら、スウェットのズボンに手を掛けると、身体をびくんと震わせて、有桜の涙が何粒も頬を滑り落ちた。

「や、めて……遥、わた、し……こわい……」

ーーーー俺は、奥歯を噛み締めた。

 このまま乱暴に、ましてや抱くつもりなんて更々なかった。

ーーーー有桜が大切だから。

 こんな風に乱暴にするのは、有桜に早くこんな俺を軽蔑して離れて欲しかったから。

 有桜が俺なんかの側に居たら、余計しんどくさせるから。早く俺から離れて、もう俺の為に泣くな、頼むから。 

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