忘れさせ屋のドロップス

「アタシが何回言っても出来なかったくせに、有桜ちゃんに言われたら、何でもできんじゃん」

 意地悪く、遥を覗き込みながら渚さんが、唇を持ち上げた。

「ま、殴られてトーゼン」

 ツンと人差し指で遥の唇の端を、絆創膏の上から突いた。

「痛っ……てぇな!」

「これに懲りたら、アンタも少しはアタシの言うこと聞くんだな。ね、有桜ちゃん」

 にこりも微笑んだ渚さんにドキッとしながら
私は大きく頷いた。

「有桜、オマエな、どっちの味方なんだよっ」

 バツが悪そうにしながら、遥がご馳走様と席を立った。


「遥ー、あとでアタシん家ちょっと来てくれる?」

 アイスコーヒーを取り出しながら、遥が、はいはい、と気怠そうに答えた。
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