冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「明日海、今日は……」

私は豊さんの顔を下からじろっと見つめて唇を尖らせた。

「私と未来との生活、後悔していませんね?」

昼間の件を蒸し返すのはどうかとも思ったけれど、きちんと確認しておきたい。彼は深々と頷いた。

「後悔なんかしない。だけど、もっともっと早く、きみに好きだと言えばよかった。勇気がなかった自分を悔いている」
「それは私もです。あなたのあふれるほどの優しさをずっと感じていたのに、そこにある本音を確かめなかったのは、臆病だったから」
「明日海、どうか俺と結婚してほしい」

豊さんがポケットから取り出したのはブルーグレーの布張りの小箱。開けるとそこにはリングがあった。華奢で美しいデザインリングには、私の誕生石のオパール。今月私は二十七歳になるのだ。

「誕生祝いは別にする。結婚指輪はきみの好きなデザインにしよう。これは婚約指輪だ。受け取ってほしい」
「豊さん、もう充分。嬉しくて、あなたの気持ちが……」

豊さんが私の左手を取り、薬指にリングをはめてくれる。

「綺麗」

呟いた言葉はキスに吸い込まれた。
驚いたけれど、私ももう遠慮したくない。彼の首に腕を絡め、唇を開いて彼を迎え入れる。

「豊さん、好き。大好きです」
「明日海、俺も好きだ。ずっとずっときみが好きだった。出会った頃も、離れている間も、一緒に暮らしだしてからも。きみでいっぱいだった」

止められないと思った。止める気もない。
互いの身体をきつく抱きしめ合い、髪も頬も瞼もキスを降らせ合う。
彼の情熱的なキスと、熱い身体を受け止めながら、私は幸せな吐息をもらした。

その晩、私は二年以上ぶりに彼に抱かれた。彼の恋人として、妻として、愛された夜だった。


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