冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
都内の閑静な住宅街に中安議員の邸宅はある。近くの公園で待機していた望と合流した。ここに来るまでに、豊さんは中安議員宅に電話をしている。出ないので、望さんのお父さんである笛吹社長からも連絡を入れてもらった。しかし、連絡がつかない。
だいたいの事情は豊さんから社長に報告済だったのがよかった。社長の方で、すぐに笛吹製粉の顧問弁護士に連絡を取ってくれるそうだ。

「ふたりとも、ありがとうございます。すみません」

公園の暗い街灯の下、望は憔悴した表情だ。可世さんの安否が気にかかるのだろう。

「行こう。俺からも中安議員に話す」

インターホンを押すが応答はない。家にいるのは間違いないのに、誰も出てこないのだ。
何度かインターホンを押すとボディガード風の男性がふたり出てきた。

「先生はお会いになりません。これ以上は警察を呼びます」
「呼んでいただいて結構です。可世さんを監禁しているのは中安先生ですから」

豊さんはまったく動じることなく答える。

「笛吹が来たとお伝えください」

ボディガードのふたりは顔を見合わせ、玄関に戻っていく。ややして、姿を見せたのは中安議員だ。後ろには妻の姿もある。

「これはこれは、豊さん、なんの御用ですか」
「先生、しらばっくれないでもらいたい。可世さんと望くんを引き離してどうするつもりですか」

豊さんが厳しい表情で中安議員に相対する。
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