冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
『出産まではごまかしてここで入院させておくつもりだったらしいんだけど、中安議員が可世にも見張りを付けた方がいいと言い出したんだ。先週の週刊誌の件で、俺が何をするかわからないと思っているんだろう。本当に苛立たしいよ。あんなふうに姉ちゃんや豊さんまで巻き込んで』
「私たちはどうにかなっているわ。でも、望はどうするの? 可世さんと会えなくなったら」

望が息を呑む気配がした。

『可世と可世のお母さんとも相談してる。姉ちゃん……』

そこから先の望の言葉は途切れた。彼が何を考えているか透けて見えるようだ。

「もしものときは、こっちは任せて。お父さんにもお母さんにも私が説明する」
『……ありがとう、姉ちゃん』

あのとき、説明もなしに消えてしまった弟を恨んだ。だけど、結果として今があるなら、私は次に進むべきなのだ。家族を守り、家族のためにできることをしたい。

望と電話を切ると藍からメッセージが届いていた。

【テレビ、つけて!】

それだけのメッセージは一分前のもの。なんだろうとテレビをつける。夕方のニュースの時間帯だが、週刊誌の一件からテレビもSNSもほぼ見ていない。

リモコンでテレビをつけると、驚いた。
LIVEと表示され、そこには豊さんが映っている。
笛吹製粉のエントランスから外へ出たところだ。

「え……豊さん?」
「ぱぱぁ」

未来がテレビを指さして無邪気に言う。
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