冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「それでは、大物議員の令嬢と噂される婚約者とは」

記者が尋ね、豊さんが答える。

「彼女には想う男性がいましたので婚約は解消しました。二年以上前のことです」

豊さんは無表情で平然と答える。おそらく、会社前で張り込んでいたレポーターに捕まったのだろう。

「愛人と噂される女性についてですが、いつから交際をされているのですか?」
「愛人ではありません。婚約者と破局後、傷心の私に寄り添い、慰めてくれたのが今の妻です。娘はそのときに授かりました」
「では、なぜその奥様とはいまだ内縁関係でいらっしゃるのでしょう」

無遠慮なレポーターの質問に、豊さんは沈痛な面持ちになる。

「誤解から彼女を傷つけ、しばらく離れていた時期がありました。謝罪し、許してもらえたので、やっと同居ができています。娘にもパパと呼んでもらえるようになりました」

そう言って、はにかんだようにわずかに口角を上げる。それは怜悧な美貌が、一瞬にして親しみやすく感じるような微笑だった。
そんな顔を全国ネットでさらさないで、などと場違いなショックを受けている場合じゃない。

豊さんがこんなふうに笑うなんて、おかしい。直感的にそう思った。
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