冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

テレビの中で豊さんはなおも続ける。

「嬉しくて社内では結婚したと言って回りましたが、妻には落ち着きなさいと叱られてしまいました。実際の入籍はこれからです。時間はかかりましたが、ようやく三人で家族になれたところなんです。ですので、今回の報道は、私たちを傷つけるひどい嘘でした」

豊さんは言葉を切って、まっすぐカメラを見つめた。

「面白おかしく書かれただけの事実無根の記事です。鵜呑みにした多くの方が、私や妻子の生活を脅かすような行動を取りました。私は笛吹製粉の役員ですから、企業の公的な顔として説明することは吝かではありません。しかし、妻と子のプライバシーを侵害するような報道や情報の拡散については許しません。今後は法的な手段を取ります」

豊さんの表情は真剣で、迫力があった。

これはおそらく、偶然の取材ではない。豊さん主導の会見だ。
報道の過熱を待って、信頼できる筋を頼り、独占取材の格好でプライバシー侵害の被害を訴える。
笑顔も話した内容も、計算されたものに違いない。

「記事を掲載した週刊誌には弁護士を通し、厳重に抗議し、記事の訂正を求めています。今後、私に取材を申し込むのはご自由ですが、これ以上の事実はありません」

そう言って豊さんは会釈をし、笛吹製粉のエントランスに入って行った。

私たちを守るために矢面に立ってくれた豊さん。私は立ち上がった。胸が震えるような感覚があった。

「未来、ママとお出かけしよう」