冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
未来はおでかけという言葉がなんとなくわかったようだ。

「いーよー」

元気な返事をし、手近にあるぬいぐるみを手にした。ゆるふわ系のプレシオサウルスのぬいぐるみは豊さんからのプレゼント。未来はお出かけのお供にするつもりらしい。

ポンチョを羽織らせ、抱っこ紐で抱き上げる。私もコートを羽織って家を出た。
向かった先は中安議員の邸宅だ。

まだ帰宅していないかと思ったけれど、自宅前でちょうど車を降りた議員と鉢合わせした。秘書を後ろに控えさせ、彼は驚いた顔で私と未来を見た。

「これはこれは、笛吹夫人。なんの御用ですか?」

馬鹿にしたように言い、私に背を向けて門をくぐろうとする。私はその背に向かって怒鳴った。

「記事を書かせたのはあなたですね」
「記事とはなんのことですか? あなたの夫の下世話な女性関係に、うちの娘が泣かされたという件ですか?」
「事実を作り変えないでください。あなたのしていることは、自分のプライドと正当性を守るために、家族も他人も傷つける暴力です」

中安議員はふっと馬鹿にしたように笑った。

「笛吹副社長は、あの週刊誌の記事の訂正を求めているそうですな。まあ、私が許さないので、記事は訂正されませんよ。裁判で争うならどうぞ。私には関係ないことです」

端から自分とは関係ないところで笛吹製粉と豊さんを傷つけようとしてやったことだ。なんて歪んだ思考だろう。

「可世さんのお腹にはあなたの孫がいるんですよ。こんなことをして恥ずかしいとは思わないんですか?」
「だから、可世の産む子は中安家でもらい受けると言っているでしょう。それで、お宅の出来損ないの息子を訴えないでおいてやろうと思っている。感謝してもらいたいくらいだ」

すると、そこに車のエンジン音。見れば、やってきたのは豊さんの愛車だ。
降り立った豊さんが私と中安議員を交互に見やる。
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