冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「明日海、なぜここへ」
「ごめんなさい。豊さんの会見を見たら、いても立ってもいられなくなって」

中安議員が大仰にため息をついた。

「まったく身分をわきまえない連中が群がってきて鬱陶しいことこの上ないな」
「その庶民にたかろうとしていたのは中安先生でしょう」

豊さんはにっこり笑う。普段表情に乏しい彼の笑顔は、獲物を前にした肉食獣の笑顔を見せた。敢えて見せる笑顔は挑戦の印だ。

「あなたは最初から、資金的な後ろ盾と企業間のコネクションを目当てに、私と可世の縁組を狙っていた。可世の失踪以降は、笛吹製粉の代わりになりそうな企業とかたっぱしから縁故作りに必死じゃないですか」
「下品な物言いをせんでくれ。友好的な関係を築いているだけだ」
「なお、あなたが姪を嫁がせた大円製紙や立松建設のトップは、父とも私とも懇意です。今後、今回の件の注意喚起を含めて会合を主催する予定です」

豊さんは厳しい目で中安議員を睨む。

「明日海と未来を巻き込んだあなたを許せそうもない。当選しなければ政治家はただの無職ということを、ご理解いただくことになりそうですよ」
「馬鹿らしい!」

いまだ強気にこちらをにらみつけ、中安議員が吐き捨てるように言ったときだ。
玄関のドアが開いた。中から出てきたのは中安夫人だ。青白い顔をしている。

「あなた」
「なんだ。おまえは下がっていろ!」
「可世がいなくなりました」

その言葉に、中安議員が目をむく。
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