冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「あ、あの男か? 探せ! すぐに探させろ!」

控えていた秘書に怒鳴るが、夫人が横から制す。

「昨日、可世から預かった荷物に手紙が紛れていました。父に監禁されているから自分の意思で家を出る。安心できるところで子どもを産む。これ以上不安にさせるなら、父親であっても許さない、と。信頼できる友人にも同じ内容の手紙を預けているそうです。……あなた、もうやめましょう。可世は本気です」
「可世は中安家の人間だぞ……!」
「ええ、私たちの娘です。でも、あなたの都合のいい駒ではないんです」

その言葉に、中安議員の顔から怒りも焦りも消えた。虚脱状態でよろめく議員を秘書が支えるのが見えた。
やはり、望は進むべき道を行くのだ。可世さんと生まれてくる命と一緒に。

「話はこれまでのようですね。失礼します」

豊さんが私の腰を抱き、車に誘導する。未来をチャイルドシートに乗せ、その場を離れた。

「豊さん、勝手にごめんなさい」
「いいや、母親になると強くなるんだったな。思い出したよ」

豊さんは笑っていた。まるでここ数日の出来事なんてなかったかのように。

「テレビ、格好良かったですよ。役者ですね」
「バレていたか」
「あんなふうに愛想のいい豊さん、あり得ないですから」

私はつんと顎をそらせ、微笑んだ。妻を甘く見ないでほしいものだ。

「望と可世さん、今頃どこでしょうね」
「心配しなくていい。落ち着いたら連絡をするように言ってある」

どうも、この件も豊さんはしっかり噛んでいるようだ。

「さあ、帰ろう」

都会の灯りの中、車は走る。私たちの家に向かって。
未来はぬいぐるみを抱いて眠っていた。

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