冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
挙式も披露宴も頑張って起きていた未来は、今や正体不明で眠っている。食事の前にドレスを脱がせておいてよかった。

「下手すると朝まで起きないかもな」
「汗かいてるのでシャワーは浴びさせたいですけど、睡眠優先ですね」

最近夜泣きも減り、夜はほとんど起きない日もある未来。今日はかなり興奮してはしゃいでいた分、疲労で朝までぐっすりコースかもしれない。

「あ、でも、興奮しすぎた日は夢をたくさん見るみたいで、起きちゃうかもです」
「そのときは、俺が夜の散歩に連れて行くよ。きっと星が綺麗だ」

豊さんが未来をベッドに寝かせる。私の手を引いて、ベランダに出た。
森と湖を臨む美しい高原には夕暮れが訪れていた。
蜜柑色に沈んでいく景色。赤く焼ける空。反対側には夜の青。

「その散歩、私も一緒に行きたいです」
「ああ、星座は詳しくないけれど、きみと未来と星を数えたら、きっと楽しい」
「ね、きっとそう」

ふと、豊さんの顔が間近にあることに気づいた。
憂いを帯びた美しいダークブラウンの瞳。
未来を授かった晩には、この瞳の奥の心に触れられなかった。彼もまた、私の真実には到達しなかった。

今は違う。私と豊さんは、一番近くでお互いのすべてを知ることができた。
これから先もずっと、心を捧げ合い、愛を積み重ねて生きていく。

「誓いのキス、もう一度いいかい?」

甘えるような伺う声に、私は頷き目を閉じた。

「はい、豊さん」

夕暮れのベランダで、私たちは唇を重ねた。この先、何があっても離れないという神聖な誓いだった。


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