冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
エピローグ
入籍し、年が明けた。二月の中旬、私と豊さんは未来をつれて羽田空港に来ている。
「未来のダウン、やっぱり薄かったんじゃないか? 北海道は寒さのレベルが違うというし」
搭乗口に向かいながら、豊さんは今頃そんなことを言う。空港内が暑く、未来が嫌がって脱いだダウンを豊さんが預かっているのだけれど、ダウンの薄さに不安を覚えたようだ。
「あまりもこもこのダウンだと動きづらいんですよ。豊さんが着ているような海外製のグースダウンは、暑がりの幼児には苦しいだけです。インナーで調整しますから、大丈夫」
「すまない。つい、口を挟んでしまった。心配性かな、俺は」
「心配性ですねぇ」
私がくすくす笑うと、豊さんはばつが悪そうに咳払いをした。
今日、私たちは初の遠出をする。
北海道の望と可世さんと生まれた赤ちゃんに会いに行くのだ。表向きはあくまで家族旅行。新婚旅行のなかった私たちにはちょうどいい理由だ。
「旭川の空港からレンタカーでホテルへ。今夜には望たちが来てくれる予定です」
「楽しみだな。生後間もない赤ん坊は見たことがない」
未来の生まれたばかりの瞬間を彼は知らない。それは本当に申し訳ないことだと思う。
「ふにゃふにゃですけど、怖がらずに抱っこしてくださいね。甥っ子なんですから」
「努力する。俺からすれば、未来も柔らかくて壊してしまいそうなんだ」