冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「でも、私と未来がいたら、豊さんは休めませんよね。それとも、他にどなたか……」

そこまで言いかけて、私は口をつぐんだ。何を言おうとしていたのだろう。他に恋人がいて、その人の家にいるのではという疑いが一瞬湧いてしまったのだ。
口にしなかったものの、豊さんには伝わってしまったようだ。

「結婚直後に、他の女の家に出入りしないだろう」

豊さんは呆れてはいない。困惑したように私を見つめている。私は自分の気持ちに戸惑いながらも、反論する。

「結婚といっても名ばかりです。入籍もまだですし、豊さんが他に心惹かれる女性がいるなら……」

そこまで言ったとき、和室でふびゃあという泣き声が聞こえた。
慌てて和室の戸を開ける。布団の上で座り、べそをかいている未来がいた。起きて私がいなかったので驚いたのだろう。

「うやああああ、ああああ」

せっかく寝たのに、という徒労感もあったが、涙を振り飛ばして泣く未来を見たら、ひとりにしてしまったことが申し訳なくなった。抱き上げてよしよしとゆする。

「夜泣きは、結構するのか」

豊さんが私の隣で未来を覗き込んでいる。豊さんは意識していないようだけれど、かなり近い距離に私は慌てた。
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