冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
だからこの家に寄り付かないというのだろうか。未来が怖がらないように気遣っているのだろうか。

「ずっと顔を合わせないでいたら、いつまで経っても慣れません」

自分でもこんなことを言うのはどうだろうと悩んだ。豊さんに未来が実子であることを気づかれたくない。未来との間には距離を保たせたい。
そう思いながらも、引っ越しの日、豊さんに抱きあげられ笑っていた未来の様子が思い浮かぶ。あれが本当の姿なのだ。
未来が豊さんに慣れるのは、三人で暮らす上でとても大事なことに思われた。

「ジャングルジムなど、未来にお気遣いをありがとうございます。でも、もしよろしければ、同居する家族として未来にもう少し顔を見せて差し上げてくれませんか?」

未来を抱いたまま、豊さんに対峙し、提案する。豊さんはダークブラウンの瞳に迷いを見せていた。

「豊さんの休息のお邪魔にならないようにします。この家は、あなたの家なので」
「……わかった。なるべく帰るようにする」

豊さんはそう言うと立ち上がり、私たちに背を向けた。廊下に出て行き、彼の自室のドアの音がした

私は未来を布団に寝かせ、起きださないようにお腹をとんとんと軽くたたく。
心臓がうるさい。豊さんに意見してしまった。いや、コミュニケーションを取ってしまった。
いつまでもドキドキが止まらず、寝付けないのだった。

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