冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
土曜日の朝、手配されていたジャングルジムが配送されてきた。プラスチックのパイプを組み立てて作る遊具で、私ひとりで設置ができてしまった。

「なかなか立派なしろものだな」

ちょうど豊さんが寝室からリビングに姿を現した。Tシャツにジーンズというラフな姿は初めて見る。

「今日はお休みですか?」
「ああ、きみの言う通り家で過ごすことにするよ。夜は会食があるから出かける」

豊さんはそう言ってキッチンでインスタントコーヒーを淹れ始める。

「何か召し上がりますか?」
「いや、いい。きみを家政婦みたいに扱いたいわけじゃない」

コーヒーマグを持ち、リビングの未来を一瞥した。未来はジャングルジムにつかまって、不思議そうな顔をしている。これが面白い遊具だとはまだ理解できていないようだ。

「安全だけ、注意してみていてくれ」
「はい。あの、家具のベビーガードも今日取り付ける予定です。確認いただいてもよろしいですか」

豊さんはコーヒーを手に私に背を向けた。

「好きにつけるといい。惜しむような家具じゃない」

廊下に出る彼を見送ると、すぐに寝室のドアが閉まる音が響いた。

「そう言われても……」

絶対にそれなりのお値段の家具に違いない。両面テープなどで傷つけるのは気が引ける。
しかし、すぐに思い直した。彼が言うなら、細かいことは考えずにやってしまおう。
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