冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「あとですね。お昼ご飯を準備してもよろしいですか? 私と未来が食べるのでついでです。お部屋で食べてくださっても構いません」
「気を遣わなくていいと言っているんだが」
「夜は会食とおっしゃっていましたけれど、朝昼まったく食べないのは身体によくないのではと思いまして。私と未来が食べるもののおすそ分けですので、気を遣って作っているわけではありません」

少し強めの口調で言い切ると、豊さんが自身の顎を撫で視線を揺らした。口元がわずかに微笑んでいるように見える。

「きみがこんなに押しが強いとは思わなかったな」

怒っているような口調ではない。
彼のイメージでは、奥村明日海はおとなしい総務の女子社員という程度の印象だったのだろう。私の性格はもともとこんなものだけれど、彼には意外だったようだ。

「ママになると、強くなるものです」

正当化して言ってみると、豊さんがはっきりと笑顔になった。それは穏やかで優しげな笑みで、思わず私は見入った。

「未来、ママが言うから、行こうか」

豊さんは私の腕の中の未来に話しかけ、それから先に立ってリビングへ向かう。今、一瞬すごく家族みたいだった。そう思いつつ、言葉にできない。
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